既存素材を活かした新プロダクト提案。柔軟な対応とデザイン力が決め手

2022/12 インタビュー・イベントレポート

[お話を伺った方]
株式会社 吉見製作所 坂 一宏 様・ 坂 春菜 様 インタビュー

 

ー  どのような事業に取り組まれていますか?

吉見製作所は形状記憶合金という金属の加工・販売に特化した会社です。私たちが扱っている金属はチタンとニッケルが半々ぐらい混ざっていて、他にはない2つの特長があります。1つは超弾性でしなやかなバネのような弾力、もう1つは熱や電流をかけると記憶させた形状に形が戻る形状記憶合成です。自社製品を作っていく方針で、これまでも釣具やブレスレットの芯材などを作っています。今後さらに新しい製品を何か作れないかと考えていた時に、愛知県主催のビジネスマッチングイベントに参加しました。

私たちは工場で形状記憶合金を使ったパーツを作ることは得意ですが、企画力や営業力、デザイン力はあまりないのが課題としてあり、そういう点を補い合える会社と出会えたらいいなと思っていました。

 

ー ユカイ工学と取り組みたいと思った理由は?

ビジネスマッチングイベントでは、各企業が何ができるかを提示しあって、興味があるところと話を進めていく流れでした。そこで初めてユカイ工学を知ったのですが、これまで作っているコミュニケーションロボットなどの企画やデザイン力に魅力を感じました。また、他社企業では最初から契約ありきという形でなかなかプロジェクトが立ち上がるイメージが持てなかったのですが、ユカイ工学は企画部分から柔軟に相談することができました。気軽に話をしやすい人柄もあり、一緒に開発してみたいと感じました。

 

ー 新プロダクト開発はどのように進みましたか?

2021年末頃から、形状記憶合金を使ったプロダクトの企画を考え始めました。いくつかアイディアや試作をユカイ工学から出してもらい、それを徐々に絞っていく形でしたね。

形状記憶合金は熱や電流で形を戻せるといっても、戻すためには設定した細かい温度や戻せる形に制約があります。それを逆手にとって、コーヒーに最適なお湯の温度がわかるツールなんていう案もありました。多くのアイディアの中から最終的に選んだのが「線人間」です。

 

ー 線人間はどんなプロダクトですか?

ぐにゃっと曲がった金属の棒がスイッチを入れると人間の形に戻るというユニークな製品です。ユカイ工学では企画・デザイン・電気部の開発を担当してもらい、吉見製作所では形状記憶合金部分の試作を受け持っています。電気設計的にはシンプルな構造ですが、形状記憶合金の特性とデザインがうまく活かせていると思います。

最初は熱だけで形を戻せないかと照明やドライヤーを使って形状を戻すことを検討していましたが、試作を繰り返す中で回路設計した電池ボックスを使った形にしようとなりました。それが2022年4月半ばのことで、そこから量産設計になるまで試作を重ねながら開発を進め、2022年8月のイベントで初めて一般の方にお披露目しました。

完成までユカイ工学の方たちが私たちと1つのチームとして、一緒の方向を向いて悩んで、考えて作り上げてくれたことが本当にありがたかったです。レスポンスも早くて、開発進行で困ることはありませんでしたね。

 

ー 線人間が完成していかがですか?

いい意味で「吉見製作所らしくない」製品ができたなと感じています。自分達ではこういったセンスのいいデザインや回路設計ができないので、ユカイ工学と組めたからこそだなと。アイディア段階で出ていた形状記憶合金お湯の温度を計るというのは、これまでもデモで見せることは多かったんですが毎回お湯を用意しないといけませんでした。線人間はスイッチを入れて電気を通すだけなので、取引先の方にも見せやすいですね。

イベントで展示した時、お客様も「どうやって動いているの?」と驚く方が多かったです(笑)元々は自社や販売店を通した流通のみを検討していましたが、ユカイ工学からクラウドファンディングのCAMPFIREと繋いでいただき、クラウドファンディングを実施することができました。多くの方に知ってもらえる機会になってよかったと思います。

 

ー 今後、挑戦していきたいことは?

今までは形状記憶合金だけを使って製品を作るという考えだったのですが、今回の線人間の開発を通して回路設計や3Dプリンターを使った樹脂での造形を取り入れるという選択肢が増え、今後の製品開発が楽しみになりました。

今後は線人間の違うタイプを作りたいのももちろんですが、コーヒーツールのように日常に根ざした製品ができると、もっと形状記憶合金のよさが広がるかなと考えています。

 

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