セミナーレポート「パーパスからはじまる新規事業~JTが手掛ける、新しい呼吸の提案~」

2024/4 インタビュー・イベントレポート

[お話を伺った方]
日本たばこ産業株式会社
D-LAB Manager 武田 里依子様
株式会社博報堂
クリエイティブテクノロジスト / 研究者 金 じょんひょん様

最近では企業が何のために存在するか、という視点から企業の社会的な存在価値や社会的意義を意味するパーパスを策定する例が増えてきており、わたしたちユカイ工学も「ロボティクスで、世界をユカイに。」をプロダクト開発時の軸とし、クイックな開発体制を築いています。パーパスがあるからこそ、社内外の関係者を牽引してプロジェクトをやり切れるケースもあり、パーパスは、開発時の判断に迷った際にも立ち返れる、大切な言葉であると考えています。

本セミナーでは、2023年2月に「心の豊かさを、もっと。」というパーパスを策定した日本たばこ産業・コーポレートR&DのD-LABと、博報堂を迎え3社で作り上げた呼吸するクッション〈fufuly(フフリー)〉開発時の課題や、様々な社内調整の乗り越え方を伺いました。

– 「心の豊かさを、もっと。」というパーパスからfufulyのアイデアが生まれたのでしょうか?

JT・武田:
私が所属するD-LAB(Delightful Moment Laboratory)では、10年以上前から心の豊かさが提供する価値の研究に取り組んでおり、fufulyのアイデアの原形も以前からありました。実は「心の豊かさ」は当社が民営化した1985年から大切にしているキーワードでしたので、2023年2月にパーパスとして再定義しました。
D-LABでは、様々なアプローチを通じて、「心の豊かさ」へ日々、向き合っています。技術進歩や変化が見通し辛い世の中において、変化に耐えうる心の豊かさをどう創出するのか?なぜそれに取り組むのか?といった価値を起点にすることを重要視しています。
近年の働き方改革によって効率よく働くためのサービスはたくさんありますが、休みにフォーカスしたものは実は限られているのでは、休みの質を向上するため「休みが持つ価値とは何か」に注目したのがfufulyのアイデアの原形です。
そして私たちは研究にとどまらず、社会実装ができるものにしたいという思いが強くあり、最初は博報堂さんに相談しました。

博報堂・金:
相談を受けた際、「心の豊かさ」が感じられる研究をいくつか紹介されました。JTさんが「心の豊かさ」を大切にしているからこそ、fufulyのような研究が生まれたんだと感じました。まさにfufulyとパーパスが並走している感覚です。
生活者に「心を豊かにしたいんだな」「良い休みを取って欲しいんだな」という企業の思い(=パーパス)に共感してもらえると、商品(=fufuly)の見方もかわってくるんですよね。これは企業のパーパスが生活者に価値を届けていることに繋がります。

– なぜユカイ工学に声をかけてくれたのでしょうか?

博報堂・金:
JTさんは、研究に留まらず製品化を見据えた社会実装をしたいという強い思いがありました。試作だけなら他にもたくさん信頼できる会社はありますが、商品化を見据えたら実績のあるユカイ工学さんしかいません。ユカイ工学さんのプロダクトは機能重視の機械ではなく、生きものを想起させてくれます。愛されるデザインも特徴なので、fufulyと相性がいいと思っていました。

JT・武田:
ユカイ工学さんにはfufuly製作のアップデートを、博報堂さんには生活者のイメージに直結するような訴求方法の検討を、当社は心の豊かさや休息に関する訴求方法の検討を行いました。

博報堂・金:
各社の得意な点を補い合い、互いにリスペクトしあっていたので、受発注の立場を超えたフラットな議論ができました。「いいものを作りたい」というゴールが同じだからこそ、このような進め方ができたと思います。

– 事業化をするための判断プロセスや基準について教えてください。

博報堂・金:
毎年CESに出展・視察をされているユカイ工学の青木さんや鷺坂さんと「fufulyの呼吸の引き込み現象の体験が新しく、面白いのではないか」と話していて、CES出展への挑戦の流れになりました。

JT・武田:
CESへの出展に向けて、当時は試作機があるだけで、「fufuly」という名前もまだない状況で、全てがこれからという状況でした。当時は本当にCESに出せるのか?半信半疑でした。
今やfufulyは、JTを通じて公表するような取り組みになっていますが、当時の社内の知名度はそこまで高く無かったので、CES出展に関して急ピッチで関連部署との調整を行いました。「CES2023には間に合わせたい!」という一心で皆さんに協力をいただいた結果、JTから「心の豊かさ」を具現化した商品を発信し、CES2023 INNOVATION AWARD受賞につながりました。

ここまで社内を説得できたのは、CESに出展することの意義やfufulyの取り組みに、社内の他部署のメンバーも含めて関係者全員が、共感・納得してもらえたことが大きなポイントでした。一個人、一社では到底できるものではありません。fufulyのビジュアル、試作機を通じた3社の強い思いがあったからこそ、周りを巻き込んでいけたのではないかと思います。

– パーパス「心の豊かさを、もっと。」をどう共通言語化し、どう理解していったのでしょうか?

JT・武田:
「心の豊かさを、もっと。」を自分の言葉でいかに語れるかだと思います。
特に中長期にわたって継続するプロジェクトの場合、なぜ「心の豊かさなのか?」を定期的に問いを続けることが大切だと感じます。悩んで答えがでないときには、チームメンバー他、様々な人に、自分のことを話してみてください。話すことで自分の考えが整理され、相手の言葉がヒントに繋がるかもしれません。
今日ご紹介したfufulyをはじめとして、わたしたちは「呼吸市場の創出」を通じ、「心の豊かさを、もっと。」を実現していきたいと思っています。
お水を飲むのに、水道水ではなくミネラルウォーターを買う時代になったように、付加価値の高い呼吸を想像できれば、呼吸を買う時代がくるかもしれません。

国内だけではなく海外市場展開も視野に入れており、2024年4月中旬にはイタリアで開催されるミラノサローネへの出展やTEDでの展示も予定しています。呼吸は誰もがするものですが、視点を変えて、違う魅力を発信し続けてまいります。

■出展情報
世界最大の家具・デザインの見本市「ミラノサローネ国際家具見本市」
名称:Milano Design Week ”SUPERDESIGN SHOW”
会期:2024年4月16日(火)~21日(日)
開催地:SUPERSTUDIO PIÙ(Milan,Italy)
公式サイト:https://www.superdesignshow.com/

TED
名称:TED2024 – The Brave and the Brilliant
会期:2024年4月15日~4月19日
開催地:VANCOUVER CONVENTION CENTRE(Vancouver, Canada)
公式サイト:https://conferences.ted.com/ted2024

 

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