CESでアワードを受賞した呼吸するクッションfufuly。「いい呼吸の具現化」を実現するまでの道のり

2024/3 インタビュー・イベントレポート

[お話を伺った方]
日本たばこ産業株式会社 D-LAB
Director 御神村 友樹様、Manager 関根 崇泰様、Manager 武田 里依子様
株式会社博報堂
クリエイティブテクノロジスト / 研究者 金 じょんひょん様、アートディレクター 杉山 ユキ様

「呼吸の引き込み現象」を活用した、呼吸するクッションfufuly(フフリー)。2023年1月ラスベガスで開催された家電やデジタル技術の見本市であるCESでINNOVATION AWARDを受賞し、The Washington PostやTech Crunch等の大手メディアに、国内ではWBSやYahooニュース等に取り上げられました。現在2024年夏の出荷に向け製造中のfufulyが、どのような背景で誕生したかをご紹介します。
ユカイ工学は本プロジェクトで①量産を見据えた試作機開発(技術課題の検証)②CESへの出展③クラウドファンディング実施、④量産品の製造・販売を担当しております。

– fufulyスタートのきっかけは何でしたか?

JT・御神村様:
私たちはJTのコーポレートR&DグループであるD-LAB(Delightful Moment Laboratory)に所属していて「心の豊かさを、もっと。」というパーパスを掲げています。中でも「休みの持つ価値」に注目し、一見無駄に見えるかもしれない時間や体験に価値があるのではないかという仮説の検証に取り組んでいます。

はじまりはJAXAによる事業創出プログラムでした。宇宙におけるリラクゼーションの実現というテーマに対して、fufulyの原形となる研究アイデアがありました。私たちは「どうしたら休みの質を高められるのか?」という問いを立てていたので、ビジョンを具現化できるかもしれないとスタートしました。

– どのタイミングで、この3社の座組となったのですか?

博報堂・キム様:
初期の試作機があったので、どういう人が・どういうシーンで使うのかをチーム内で使い、ヒアリングを重ねました。試作機を抱えていると心が休まるという回答もあり、ニーズがあることを確認した一方で、初期試作機は研究用途で作られたものでしたので、日常ユースのためには改良が必要であるという課題感もありました。そのタイミングで、Qooboという製品で既に機械仕掛けで動くクッションを作っていて、チームメンバーもよくプロダクト開発について知っているユカイさんに製品化を意識したプロトタイプの開発をお声がけさせていただきました。

JT・関根様:
当時丸の内のKITTE内にあるショップでQooboが展示・販売されていたので、すぐに見に行き、体験しました。Qooboで癒されながら、このプロダクトを作った会社と協業できるなら私たちがやりたい「いい呼吸の具現化」ができるのではないかと感じました。

– ユカイ工学から納品された試作機を体験したときの第一印象はいかがでしたか?

JT・関根様:
初期試作機に比べて抱きかかえたときの呼吸の力強さがより向上され、耐久性も上がっていました。開発中も呼吸の方式をいくつか検討いただくなど、これまで数々のロボットを作ってこられたユカイさんの打ち手の多さに圧倒され、頼れるパートナーだなと思いました。

JT・御神村様:
触ってすぐ、全然違うなと感じましたね。クッションが持つふわふわ感も相まって、カームダウンの動きが気に入りました。

博報堂・杉山様:
当時クッションのデザインを並行検討していた時期でしたが、ユカイさんの試作機は抱えた瞬間からいい動きだなと感じました。抱いているときの安心感や自然な動きが、イメージ通りでしたね。わたしはデザインを担当しているのですが、ユカイさんの試作機がよかったのでクッションの形状やカバーをどうするのかの検討にも力が入りました。
結果、fufulyのテーマ・呼吸に合わせて有機的なふわふわした形に落ち着きました。自分にフィットするような抱き方を探せるような要素もデザインの中に取り込んでいます。

– ありがとうございます。ユカイとしても、実験機での課題を明確にしていただいたおかげで技術解決に注力することができました。

– CESでINNNOVATION AWARDを受賞しましたが、出展の経緯を教えていただけますか? 

CES2023出展の様子(撮影:集合写真家 武市真拓)


博報堂・キム様:
これまで毎年CESに出展・視察をされているユカイの青木さんと話しをしているときに、CES出展へ挑戦してみましょうか!という流れになり、JTさんに打診をしてみました。

JT・関根様:
CESは本当に大きな展示会のイメージで、以前からチームメンバーが視察にも行っています。
博報堂さんからの打診をうけて、そんな大きな展示会に出すチャンスがあるのか、と驚きました。ですが、当時はネーミングが確定していない他、決めなければならない事項もあり、「CESには間に合わせたい!」という一心で、大急ぎで商標チェックや社内関係部門との調整などを進めました。
皆さんに協力をいただいた結果、JTから「心の豊かさ」を具現化した商品を、CESというグローバルな場で発信をすることにつながりました。さらにINNOVATION AWARDをも受賞できたことは、今でもすごいことだなと思っています。

博報堂・キム様:
大きな企業だと、表に出すことにいろいろな制約等もある中で、今回のプロジェクトではその壁を乗り越えて、グローバルに発信するというゴールを迎えられました。
またINNOVATION AWARDの受賞がきっかけで、思いがけずにThe Washington PostTech Crunchなど多くの海外メディアに掲載されて、「ニュースを見た」と多くの方が来場いただきました。

– CESへの出展とAWARD受賞により、社内の反響はいかがでしたか?

JT・武田様:
CESの反響をうけた後に、この反響を是非いろいろな人に触れてもらいたいという想いで「呼吸する休憩所」という場をつくり、そこにfufulyを置きました。「呼吸する休憩所」はD-LABが初めて社内に向けた発信をする場になったのですが、想像した以上に反響が良かったです。
JTグループのパーパス「心の豊かさを、もっと。」を具体化する組織であるD-LABが、「心の豊かさ」を真剣に考えて、それを製品化まで進めて、かつ世界にも認められていることが、JT社員として嬉しい、元気に繋がっているという声をもらうことができて、D-LABの活動、またこの3社での取り組みが素晴らしい活動であることを実感しました。

博報堂・キム様:
パーパスを大事にしているJTさん、モノづくりに本気なユカイさん、クリエイティブが強みの博報堂という、3社の強みをうまく掛け合わせた座組が面白いと社内で注目されました。

呼吸する休憩所とfufuly

– 今後fufulyをどのように展開していきたいですか?

博報堂・杉山様:
CESに出展してみて、日本人だけでなくアメリカ人でもストレスフルな生活をしている人が多くいたのが新鮮でした。ターゲットは日本だけでないので、世界展開も狙えたらと思っています。

博報堂・キム様:
fufulyを抱くとあかちゃんを抱っこしているような感覚で心がなごむので、避難所や高齢者施設にも良さそうだなと思っています。また職場利用で、会社の休憩室に置くなど福利厚生の一環としてもはまりそうです。

JT・御神村様:
fufulyは体験いただいてこそ価値が分かるプロダクトですので、触って体験いただける場を増やしていきたいです。きせかえカバーなど遊び心あるアクセサリーの開発にもチャレンジしてみたいですね。

JT・武田様:
期間限定で本社で開催した「呼吸する休憩所」ですが、社内からは常設してほしい!工場や支店にも展開してほしい!という言葉や、実際に社外の方からこういう場所に設置しませんか?という引き合いもあり、その声がfufulyプロジェクトメンバーとして自信になっています。fufulyは、これがないと生きていけないといったプロダクトではないですが「心の豊かさを、もっと。」というパーパスに沿って開発されたfufulyをJTから発表できたことも嬉しく思っています。

レポート一覧ページはこちら
法人向けサービスはこちら

メールマガジン

開発事例インタビューやセミナーレポートなどの最新情報をお届けします。
是非お気軽にご登録ください。

IoTシステム開発や
ロボット活用・開発のお困りごとは
ユカイ工学にお任せください

お問い合わせ・資料ダウンロード