電気味覚で、次の100年も愛される調味料をつくる

2024/6 インタビュー・イベントレポート

[お話を伺った方]
味の素株式会社
コーポレート本部 R&B企画部 アクセラレーショングループ
松本 凌様
食品事業本部 食品研究所 商品開発センター 調味料グループ 
船水 拓実様

塩分の過剰摂取による生活習慣病が社会課題となっている中、”Eat Well, Live Well.”の実現を掲げ、テクノロジーを通じて減塩に挑戦している味の素株式会社。同社が発見・開発したうま味調味料「味の素®」は100年以上も愛され続ける調味料です。「味の素®」に続く可能性がある、次世代の新しい調味料創出を目的とした電気味覚とは何なのか?
ユカイ工学は本プロジェクトで①アイデアの具現化~コンセプト設計②プロトタイプ開発を担当しております。

– ユカイ工学への相談のきっかけは何でしたか?

松本様:
私が所属する部署には社内起業家公募プログラム「A-STARTERS」という既存事業にとらわれない、未来起点のイノベーティブな新事業やサービスの創出を図る取り組みがあります。
本プログラムで私は、次世代の調味料創出を目的とし、減塩を必要とするお客様向けに“電気刺激で食品の味を増強するデバイス”の開発を担当しています。

船水様:
私は食品研究所に所属しており、「ほんだし®」 や「味の素®」等の調味料、インスタント食品等の商品開発に携わっています。お客様のおいしさや健康な毎日に貢献できる商品づくりと研究を日々行っております。

松本様:
元々本プロジェクトは東京大学との共同研究で進行しており、私は研究に留まらずプロダクトを作っていきたいという想いがありました。そのためにモックアップを早めに作成することが必要で、ユカイ工学さんの他複数社のハードウェア製作が得意な企業に声をかけました。複数社の中でも、元々私がユカイ工学さんの独創的なプロダクトQooboを知っていたことから、「電気味覚」という新しい味調整技術を活用した新規プロダクト開発も引き受けてくれるのではないかと期待していました。またユカイ工学さんはCESの他、数々の受賞歴やクラファン等、実績をお持ちだったことがとても魅力的で、最終的には「ユカイ工学さん一択だ!」と確信して開発を依頼させていただきました。

– プロジェクトを進めるにあたっての不安はありましたか?

松本様:
まだ世にないプロダクトを実現できるのか?科学的にどこまで実現でき、受け入れられるのか?など不安は尽きません。これまで確証がない中での決断をたくさんしてきました。
今では、私の仕事は調味料に関するイノベーションを起こすことがミッションなので、不確実だからこそやるべきと捉えています。周りから批判されることはやったほうがいいのでは?と思うようになりました。

船水様:
研究所では、おいしさの設計や健康に関わる様々な研究・開発を行っており、私も様々な複数のプロジェクトに参画しています。今回のプロジェクトは研究所としても初めての領域ですが、多領域の研究・開発とのシナジーが生まれればと思っています。

– ユカイ工学にとっても、初となる電気味覚プロジェクトでした。
当社とコミュニケーションを取るうえで大変だったことはありますか?

松本様:
ユカイ工学さんとのコミュニケーションで大変だったことはありません。というのも、私たちがハードウェアの知識が何もない中、私たちの抽象的な依頼を具体的に落とし込んでいただいた結果、創造を越えたデザインを提案していただきました。あと、意思決定者のCDO巽さんやCTO鷺坂さんがプロジェクトメンバーにいらしたのも、心強かったですね。

デザインモックと、社内テストの様子

ユカイ工学:
味の素さんからは、仕様を明確に提示いただいていたので、具体的に落とし込んでいけました。実際に操作をすることを見据えて、なるべく操作はシンプルにしたデザインや技術の提案ができたように思います。私たちにとっても電気味覚は初めての取り組みで、難しい反面楽しかったですね。

– 案件を通じて、社内外コミュニケーションで大変だったこと、また変化があれば教えてください。

松本様:
今でも、社内からは食品と調味料の会社でなぜデバイスを作るのか?と言われます。“電気刺激で食品の味を増強するデバイス”を初めて提案したときにも、「それは当社がやることではない」など厳しいご意見もいただき、提案を理解いただくのに時間がかかりました。ですが私は、単なるデバイス開発ではなく、電気味覚という次世代の調味料を開発しているという軸を崩さずにいました。
しばらくして、別企業による電気味覚の取り組みがメディアに注目され始めるなど、社会的な情勢の変化がありました。加えてユカイ工学さんが作ってくださった商品コンセプトとデザインが効き、一気に社内のファンが増えたのを感じました。

船水様:
研究所でも、当初は様々な意見をいただきましたが、ユカイ工学さんのプロトタイプがあると、研究所のメンバもお客様が食生活でどのように使用されるかのイメージが沸き、具体的なフィードバックを受けながら研究・開発を進められました。

松本様:
加えて、2024年3月に開催された日本農芸化学会での発表でも大きなインパクトがありました。例年約2,500演題のうち約30演題が選ばれる「トピックス賞」を受賞することができました。当社では8年ぶりの受賞です。またブース展示にはひっきりなしにお客様がいらっしゃり、注目度が大変高い取り組みでした。展示ができたのも、アイデアを具現化してくれたユカイ工学さんのサポートがあってこそですので、本当に感謝しています。

日本農芸化学会での展示の様子

– 今後どのように展開していきたいですか?

松本様:
たとえば高血圧や腎臓病など、減塩を必要とするお客様が抱える食生活の課題を、ユカイ工学さんと作ってきたデバイスで解決していきたいと思っています。
また当社は世界一の調味料技術を持っています。これまでの調味料の概念を変えて新しい調味料を作り続け、お客様の幸せに貢献し続けるミッションを背負っていますので、「味の素®」のように100年後も愛され、使われる調味料を作っていきたいですね。

船水様:
私たちはお客様の「おいしい」につながるための次世代の調味料を作っています。次世代の調味料として、お客様の生活でどのように使われ、皆様のwell-beingに貢献していけるかを、 これからも研究し、実現していきたいですね。

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