内臓したセンサから取得する心拍データと行動記録から、愛犬のこころとからだを見守るスマートデバイスです。先行で発売していた「イヌパシー」の後継機として、より小型化して使いやすい形状と機能にアップデートされました。最小限のサイズでありながら、有機的な丸みとやわらかな光りで、愛犬の心理状態をさりげなく表現します。また、交換可能な首輪は様々なカラー展開を想定していて、季節や気分にあわせて自由に衣替えが可能です。
イヌパシー・カラーは株式会社ラングレスの製品で、ユカイ工学はハードウェアケースデザインを担当しました。
クラウドファンディングサイト:https://camp-fire.jp/projects/view/572208
株式会社ラングレス × ユカイ工学 開発事例紹介
動物の気持ちがわかる、動物用デバイスのデザインを短期間で対応
– どのような事業に取り組まれていますか?
ラングレスは「世界のあり方を、あらゆる生物たちと共に決める社会の実現」を目指している会社です。そうした想いから、心拍数で愛犬の気持ちを解析する犬用ウェアラブル「イヌパシー」が生まれました。
CTO・山口は元々動物行動学を専攻していました。愛犬が歳をとり、食べている餌を本当に喜んでくれているのかがわかりにくくなってしまい、どうしたら彼らの気持ちを理解できるかを研究した結果、心拍が一つの答えだとたどり着きました。開発を重ねセンサーから取得した心拍情報を元に、心拍の分散値から自律神経の活性状態を推測するアルゴリズムによって、心拍から対象の状態を可視化することに成功しました。その技術は大変稀有なもので、すでに日本とアメリカで特許を取得しています。
そこから心拍の状態にあわせLEDの色で、それぞれの感情を伝えるウェアラブルデバイスのプロトタイプを開発し、2018年に最初の「イヌパシー」を発売しました。
– 今回新たなプロダクトを開発した理由は?
「イヌパシー」は胴体に取り付けるハーネス形状でのウェアラブルだったため、飼い主さんによっては、抵抗を感じてしまいつけさせられないという声をお客様からいただいていました。そこで馴染みのある首輪型ウェアラブル「イヌパシー・カラー」の開発を決めました。
ハーネスタイプの「イヌパシー」から開発も進み小型化すること、また心音を取得する位置も改良しています。技術面においては社内で最大限の成果を出すことができていましたが、実際のお客様に使っていただくにあたり意匠面が懸念でした。そこで、ユカイ工学に相談させてもらったんです。
– ユカイ工学に意匠設計を依頼した理由は?
家族である愛犬とのコミュニケーションに日々使っていたくものだからこそ、日常に溶け込むデザインがいいと考えていました。ユカイ工学のプロダクトは良い意味で気取ってなくて、優しさや自由さを感じるものが多いと感じていました。特にコミュニケーションロボット「BOCCO emo」は特徴的で、ロボットって企業によってまったく違う顔つきになりますよね。BOCCO emoは日常生活のすぐ隣にありそうな雰囲気を感じていて、そういうデザインを求めてユカイ工学に相談しました。
ユカイ工学が受託開発を受けていることは知っていたんですが、ハードウェア開発全体でないと依頼できないと思っていたので、相談の中で一部だけでも開発していただけると知って安心しました。
– プロジェクトの中で印象に残っていることは?
イヌパシー・カラーの相談をした時点で、首輪に取り付ける方法も決まっており、まったく変更の余地がない状態でした。つまり、ユカイ工学へは本当に見た目の意匠のデザインのみの依頼でした。制約の多い中で、私たちの要望を伝えたところ、最初のご提案から「これだ!」と思うものを出していただいて感動しました!展示会にあわせて出していただいたので、実質1週間程度で最終デザインが決まったと思います。造形も含めて1ヶ月程度でしょうか。
前プロダクトの「イヌパシー」の要素を受け継ぎながら、変にメカメカしくなく、無理なく溶け込むデザインに仕上げていただいてとても満足しています。
– 事業を展開してみての反応はいかがですか?
4月中旬からクラウドファンディングを始め、721%達成と多くの方に支持していただきました!前プロダクトからご愛用いただいているユーザーさんからも、待望の首輪型ということで、期待する声をいただいています。
またクラウドファンディング前にCES 2022で展示を先んじて行ったのですが、その際に北欧にお住まいの方からデザイン面をとても評価していただけました。このデザインなら愛犬につけてみたいと。暮らしそのものを大事にする北欧の方にも気に入っていただけたことは、私たちにとっても嬉しいことです。
– これから挑戦していきたいことは?
今ではスマートウォッチなどで人間の心拍をとる価値について広く知られてきているところですが、動物の心拍を撮り続けることの価値、というのがまだ世の中に普及していません。最初はスマートウォッチも、生きている挙動をセンシングし続けることがどこまでの病気予防に繋がるのかなど、明確になっていない状況で始まっていると思います。それは人間に限らず動物にもいえることです。むしろ体調不良を自分で訴えられない動物だからこそ、言語以外の形でコミュニケーションや状態を伝える術が必要だなと感じており、この価値や技術をもっと広めていきたいです。