シニアの心を動かすロボット、Qooboの「動くしっぽ」高齢者介護施設で実証。ポジティブ反応効果が長期間継続。

2019/9/3 ニュース

2018年11月より発売を開始した、 しっぽのついたクッション型セラピーロボット「Qoobo(クーボ)」を用いて、 日本福祉大学福祉経営学部教授の尾林和子氏の協力の元、 2019年7月24日~8月16日の期間、 高齢者介護施設にて実証実験を行いました。

※調査実施:社会福祉法人東京聖新会/データ分析解析:一般社団法人ユニバーサルアクセシビリティ評価機構
※補足:この内容の一部は、 9月4日から7日まで行われる第37回日本ロボット学会学術集会にて発表されます。 詳細はこちら

「おたまじゃくしみたいだね」 思わずジョークが出るほどこれは面白い体験だった。

「これ、 面白いわよ~!」しっぽの動きが可愛くて隣の人にも勧めちゃった!

 

Qooboがなにを変えたのか。
高齢者の介護現場における「ポジティブ効果」を実証

特別養護老人ホームおよび介護老人保健施設の男女40名に対して、Qooboのしっぽの動きによる効果を検証しました。
高齢者のQooboに対する感情面や表情を観察することはもちろんのこと、下記の項目をカテゴライズし、総体的に「その人がどう変わったか」を評価しました。

・感情的な反応「怒り」「不安・恐怖」「中立」「喜び」「悲しみ」
・言葉による反応
・視覚による反応
・行動にみられる反応
・他者やグループとしての反応
・動揺・興奮(の軽減)

※今回の研究調査では、VC-IOEを参考としてVC-IOE(J)を作成し、指標とした。
(VC-IOE:the Video Coding Protocol-Incorporating Observed Emotion)

その結果、しっぽが動かないQooboとしっぽが動くQooboの高齢者に対する効果を比較した時、総合点ではしっぽが動くQooboによる効果が明らかに高く、人の「心を動かし」、発話や撫でるなどの「行動を促し」、他者との活動と参加を促す契機となっていることがわかりました。

 

ポジティブな効果が3週間後も持続

Qooboがもたらすポジティブな効果は、初めてQooboを見て触れたときだけに留まらず、その後3週間も持続したことが確認されました。

従来のコミュニケーションロボット導入時の長期間利用に懸念されている「飽き」による効果の低下が見られず、ポジティブ効果がさらに大きくなる傾向が見られ、Qooboは「継続的に使用し続ける」ことが可能なツールであると期待されます。

Qooboはあえて特定の動物の顔をデザインせず、丸いクッションにしっぽがついているような仕様のため、しっぽが動かない状態では、ただのクッションのように見なされます。ですが、撫でると「しっぽが動く」というQooboならではの要素が最大の癒しのきっかけになります。

ペットが飼いたくても飼えない集合施設や賃貸物件、体調不安などの様々な状況においても、Qooboは言葉を交わさずともペットに代わる癒しの存在となる唯一無二なロボットです。

「あら、あなたかわいいわね」 どんどん愛着が湧いてきて 「しっぽくん」と呼んでみたり。

例えば、普段は視力や体力の低下で寝たきりの生活を送る女性にQooboを渡すと、抱いて撫で、しっぽが動いた途端に表情もリラックスしたものへと変化。聞くと、昔飼っていた猫を思い出し、懐かしい気持ちになったというエピソードも。

これらのQooboがもたらす効果を生かし、今後、福祉機器の認定など幅広い用途で活用できるよう若年層から高齢者層に至るまで、笑顔を生み出すセラピーロボットとしても普及して参ります。高齢者施設への広がりはもちろんのこと、敬老の日をきっかけにシニアのご家族への贈り物としてもご利用いただきたいプロダクトです。

 

尾林和子 日本福祉大学 福祉経営学部 教授
2014年日本社会事業大学専門職大学院福祉マネジメント研究科修了。社会福祉法人東京聖新会理事、特養施設長、老健副施設長として介護現場を運営しつつ、ロボットやICTを高齢者医療福祉領域に導入する研究を行う。内閣官房タスクフォースでの提言や福祉現場の人材育成を目的として東京都、東京都社会福祉協議会、全国社会福祉協議会を始めとする各種団体にて活動、FTIC理事を務める。2019年日本社会事業大学より福祉領域研究で高評価を得た研究者に与えられる木田賞受賞。日本老年医学会、アイルランド老年学会、EuGMS、日本遠隔医療学会、日本ロボット学会、日本認知症ケア学会等。

尾林和子教授コメント 
「これ、オタマジャクシ?ネコ?あら、しっぽを振ってる!おもしろいっ!!!」これは、高齢者の方々がQooboに初めて会った時の感想の一部です。コミュニケーションロボットの中でもQooboは「つい、言葉が出てしまう」「つい、撫でてしまう」等、行動を「自然に引き出す」トリガーとなるところが印象的。人の心を動かし、高齢者ご本人だけでなく、周囲にも笑顔が広がることを確信した瞬間でした。「飽きない」存在であることも素晴らしいです。

 

<評価方法詳細>
評価基準と定義
それぞれの項目を5段階評価とする。
・それぞれの項目を、5段階評価(-2,-1,0,+1,+2)して効果度を数値化する。

評価の方法
・Qooboを一人に一つずつ提供し、その際の反応を10分間撮影する。
・この映像を評価者3人(介護現場スタッフ、主任クラス、評価指標改定担当者) がVC-IOE(J)指標を用い評価する。最終評価値は3者が合議し確定する。
・①初印象と②本調査をおこなう。

① First challenge impression(初印象調査)
対象者40名に対し、しっぽが動かないQooboとしっぽが動くQooboを初めて見たときに「どのような反応をされたか」を調査。(マンツーマンでQooboをセッティングし、それぞれのリアクションを観察記録する)

② 本調査
対象者20名(ひとりづつ一台のQooboをお渡しし、3週間24時間共に生活する)。
・個別に決められた時間に約10分Qooboを目の前に置いて、観察し、その映像を記録する。
・3週間の間に3回評価を行い、平均値を得る。
VC-IOE(J)指標を用いて評価し、導入前と導入後を比較する。

結果1:First challenge impression

両方を行った40名を比較すると…

しっぽが動かないQooboとしっぽが動くQooboの効果比較。総合点では、しっぽが動くQooboによる効果が明らかに高かった。

結果2:First challenge impression各項目

各項目いずれの反応も、しっぽが動かないQooboの効果より、しっぽが動くQooboによる効果が高かった。

このうち、
・言葉による肯定的反応、
・視覚による肯定的反応、
・他者やグループとしての反応
は、統計学的に意味のある変化であった。

結果3:3週間後の効果は?

3週間後の評価は、3日間3回の評価の平均を用いた。
・対象者20人名。うち3週間継続評価できた対象者17名。
・効果度は、平均5.7から7.8点へと上昇(ただし、paired t-test ではp=0.06)。

Qoobo効果は3週間たっても保たれている(上昇傾向)、といえる。

 

実証実験協力施設:老人保健施設「ハートフル田無」/特別養護老人ホーム「フローラ田無」
※関連動画「Qooboの実証実験視察」:http://tokyo-seishinkai.or.jp/20190809/

※この研究は、社会福祉法人東京聖新会の倫理委員会により承認を得たものです。また、調査対象者の選定基準は「ご本人とご家族の承認を得られること」また、「意思の疎通が図れること」としています。

もどる