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いつ、何をどうするか?成功のための虎の巻失敗しないクラウドファンディング術

青木 俊介

1978年千葉県生まれ。東京大学工学部計数工学科在学中にチームラボを設立し、CTOに就任。2007年に中国・上海にある東華大学信息科学技術学院へ留学。帰国後にピクシブのCTOを務める。2011年にロボティクスベンチャー「ユカイ工学」を株式会社化。2015年よりグッドデザイン賞審査委員を務める。

ロボットは人に寄り添い、人の心を動かす存在。

ロボットに必要なのは、人の感情をセンサで分析する機能よりも、人の感情を呼び起こしてくれる機能であると考えているユカイ工学の青木代表。
温かい共感を重視した家族をつなぐコミュニケーションロボットの「BOCCO」、しっぽのついたクッション型セラピーロボット「Qoobo」など、約6年前からクラウドファンディングを成功させてきたユカイ工学の青木代表が、そのノウハウを伝授します。

このドキュメントでは

についてご紹介していきます。

初期の資金調達にクラウドファンディングを選ぶべき4つの理由

まず、色々な資金の調達方法がある中で、何故クラウドファンディングを選んだのかを教えてもらえますか?

はい。クラウドファンディングを最初に選んだ理由は、大きく分けて4つあります。

それが、

  1. テストマーケティング
  2. 話題づくり
  3. 応援者づくり
  4. 資金調達の最大化

ができることです。

1. テストマーケティング~クラウドファンディングで事前にニーズを把握しておく~

まず1つ目の「テストマーケティングができること」とはどういうことでしょうか?

テストマーケティングができるというのは、開発・販売前に事前にニーズの把握ができるということです。 ロボットの開発・製造には多額のお金がかかります。その上、まだ市場が新しいので「どういうものが売れるか」の予測も難しい。そのため、量産して市場に出してみたら思ったほどニーズがなく大赤字。そんなことになったら企業として再起も困難になってしまいます。

クラウドファンディングでは支援(お金を事前に支払う)してくれた方へのリターンとして、プロダクト(ロボット)を提供をする。この方法で損益分岐点までいければ、市場には十分なニーズがあると考えられると同時に、リスクを極限まで低くすることができるわけです。

開発前に本当にニーズがあるかをチェックできるということなんですね。それは事業としてリスクヘッジになりますね。

2. 話題づくり~目標達成ごとにニュース化をする~

では、次の「話題作り」というのはどういうことでしょうか?

技術や製品として真新しいという要素はもちろん話題にはなりますが、クラウドファンディングを利用して目標値を達成すれば「クラウドファンディングで〇%達成!」というニュースを作れます。開発前の段階から、SNSやメディアで取り上げられれば盛り上がっているイメージや、自分も買ってみようかという流れを作ることができます。

結果として、商品化した時に「初めから人気に火が付いた状態」で売り出せるということです。

たしかに私自身、「〇%達成!」という人気に釣られて見にいき、魅力的だったのでそのまま支援したこともあります!

3. 応援者づくり~クラウドファンディング上ではファンを増やしやすい~

話題を作ったあとで3つ目の「応援者づくり」ということですが、これはどいういうことですか?

この場合は単純に金額的な支援というよりも、文字通り「応援者」を増やしたいという思いですね。 クラウドファンディングを使わずに製造・販売をした場合、販売当初に出てくる製品レビューは通常のユーザーの意見です。一般的に辛口レビューが好まれるためか、結構厳しいレビューをいただくことも多いです。

ただ、クラウドファンディングで支援を集めていると、金銭的な支援はせずとも応援してくれる人、いわゆるファン、が現れやすいんです。そして、応援者の多くが好意的な意見を書いてくれる。これは、クラウドファンディングというプラットフォームで出会える人たちは「応援をしたい」という思いの人が多いからではないかなと、考えています。(もちろん製品自体が期待外れではいけませんが...。)

金銭面だけでなく、好意的な意見を出してくれる応援者を増やしたいということだったんですね!たしかにそういった側面のある方々がクラウドファンディング支援者には多そうです。

4. 資金調達の最大化~クラウドファンディングで成功してから資金調達をする~

それでは最後の「資金調達の最大化」とはどういうことでしょうか?

これは事業計画のペーパーや前職での経歴だけで資金調達するよりも「クラウドファンディングに成功しているという実績」があるほうが、長期的に見て調達の総額が増えやすいということです。うまくいくかどうか一か八かのプロダクトよりも、クラウドファンディングでテストマーケティングが済んでいて「サービスの発展性が見込める」と投資家が思える方が、調達可能額が明らかに増えやすくなります。

投資家からしても「ある程度成長性が見込めるプロダクト」を応援したくなる。その気持ちは私も想像がつきます。

まとめ:クラウドファンディングを活用するべき4つの理由

1. テストマーケティングができること=クラウドファンディングで事前にニーズを把握しておく

2. 話題作りができること=目標達成ごとにニュース化をする

3. 応援者づくりができること=クラウドファンディングを活用してファンを増やす

4. 資金調達の最大化ができること=クラウドファンディングで成功してから資金調達をする

クラウドファンディングを成功させる5つのコツ

次にクラウドファンディングを始めたときの成功のコツを教えていただけますか?

クラウドファンディングを成功させるコツはいくつもあるのですが、基本的に大事なことは5つあると考えています。

それが、

  1. 事前に期待を膨らませる
  2. 支援期間を適正に設定する
  3. オンラインで盛り上げる
  4. オフラインでも盛り上げる
  5. 中だるみ対策を考えておく

ことです。

1. 事前に期待を膨らませる~クラウドファンディング開始前から、情報を出し始める~

どれも興味深いです。まずは「事前に期待を膨らませる」からお伺いできますか?

これは、クラウドファンディングが始まる前からきちんと情報を出して、見込み支援者の期待を膨らませるということです。この見込み支援者の反応を見ることで、クラウドファンディング自体のテストマーケティングにもなります。

まず情報の出し始めはクラウドファンディング開始の半年前には始めています。 例えば、ティザーサイト(開発中の情報を提供するWebサイト)をつくって情報を少しずつでも提供し始めたり、プレスリリースを打ったりすることなどですね。また、ユカイ工学の場合は半年前くらいからCEATECなどの展示会で製品の試作品を公開し始めます。そこで興味を持ってくれた方のメールアドレスなどを整理したり、SNSのフォローなどを促しておきます。 そして、開始1カ月前、2週間前、3日前などにこれまで興味を持ってくださった方や、SNSを通じて告知をしていくわけです。

まとめ:事前の期待を高める活動例
半年前:
ティザーサイトを作る、プレスリリースを出す
〜1ヶ月前:
イベント展示会に出て試作品を展示(ユカイ工学の場合はCESやCEATEC、SXSWなど)
1ヶ月前・2週間前・3日前:
メールマガジンやSNS(イベントで興味を持っていただいた方など)でリマインド

クラウドファンディングは公開直後の初速がすごく重要です。そのため徐々に情報を出しながら、期待を膨らませておくことで、プロジェクトの公開と同時に支援やシェアを見込んでいます。

2. 適正なプロジェクト期間〜支援漏れと中だるみを防ぐ支援期間を設定する〜

それでは事前準備が済んだ後、実際に公開するときの支援期間について教えていただけますか?

支援期間を適正に設定することはすごく重要で、特におすすめな支援期間は30日だと考えています。理由は「支援漏れ」と「中だるみ」の対策です。例えば、支援期間が短すぎると気づかれない間にクラウドファンディングが終わってしまう可能性がありますし、支援期間が長すぎると「後で支援すればいいや」と考えて、結局忘れてしまうということが起こります。また、支援期間が長すぎると途中で中だるみしてしまって、 自分たちも応援者も疲れてしまうものです。

一点集中で力をいれるためにも、30日くらいにすることをおすすめします。

たしかに、私も支援期間が長いので「後でいいや」と思って、支援し忘れた経験がありました...。 でも30日であれば「今やらなきゃ」と思いそうです。

3. オンラインで盛り上がる〜プロジェクト期間は、オンラインで即レス体制を整える〜

それでは、「オンラインで盛り上げる」についても教えてください。

オンラインで盛り上げるために、クラウドファンディングのプロジェクトページとSNSに力を入れています。 プロジェクトページにおいては、質問に対してすぐに返事できる「即レス体制」を整えています。そして、質問によっては、すぐにページのQ&Aに載せます。また、SNSについてはTwitterでは常にプロジェクト名やプロダクト名、会社名などで検索をかけておき、関連の投稿があればすぐにシェアするなどの反応をします。

プロジェクトページでもSNSでもそうですが、やはり自分の発言が拾ってもらえると嬉しいものなので、喜んでもらいやすく、盛り上がりを共有できます。そしてそれがさらに次の質問や投稿につながるんです。

自分だったら、他の人が公式にシェアしてもらっているのを見て、「自分も投稿してみよう」となると思います。なので、さらなるシェアの誘発という意味でもすごく良さそうですね!

4. オフラインでも盛り上げる〜支援候補者が集まる場に出向く。イベントを開催する〜

ここまでオンラインでの盛り上げについて聞いてきましたが「オフラインでも盛り上げる」についても教えていただけますか?

オフラインでの盛り上げには結構色々な方法があると思っています。

その1つが「支援してくれそうな人が集まるところに出向く」ことです。例えば、IT系の人がよく集まるバーなどに実際に試作品を持って行くことなどが挙げられます。 また、これまでに製品やブランドにファンを抱えているのであれば、ファンミーティングの開催なども有効です。 ファンミーティングの例として、ユカイ工学ではクラウドファンディング実施前の昨年秋に、Qooboのファンを集めた【Qoobo「秘密の」ファンミーティング】を開催しました。 ここではユーザーとの交流だけでなく、開発段階のPetit Qooboを初めてお披露目する場として活用し、Petit Qoobo開発担当より、これからどのような仕様で開発を進めるか、どんな特徴があるか、を説明しました。 会のタイトルにもある「秘密の」というのは、ここで披露する開発中のPetit Qooboは、この段階ではSNS等には情報公開しないというルールの元で行いました。この「秘密の」共有をしたことにより、さらにファンの方々と一体感を持てたと思います。 また、GMOペパボのオリジナルグッズ制作サービス「SUZURI」とタイアップし、参加者とユカイ工学のデザイナーで公式Qooboグッズを作ったりなど、大きく盛り上がりました。

このように直接開発担当と関われるというオフラインならではの仕掛けをすることが大切です。

こうしたファンミーティング自体が話題になりえますし、参加者がSNSでシェアすることで、参加者の周辺の人たちからの認知や支援をあつめることができます。ただ、好意的なシェアでなければ本末転倒のため、参加者の方々がきちんと満足してくれるようなコンテンツをしっかりと考えることが重要です。

たしかに知り合いが熱意をもってシェアしている製品だと、広告などで見るよりもずっと気になります!

5. 中だるみ対策〜盛り上がりに欠ける時期に限定モデルなどの話題になるリターンを追加する〜

それでは最後に「中だるみ対策を考えておく」について伺えますか?

例えば支援期間が30日だとします。そうすると、どうしても中盤は盛り上がりに欠けやすいものです。

そこで、盛り上がりに欠けてしまう中盤に「ニュースになるようなリターンの追加」をするのがおすすめです。例えば、ニュース性のあるアーティストさんとコラボをして、クラウドファンディング限定モデルを出すようなことですね。そうするとコラボ自体が話題になりますし、そのアーティストのファンが支援してくれる可能性もでてきます。

ユカイ工学ではBOCCOのクラウドファンディング時にアーティストコラボレーション限定モデルを用意しました。1,000ドル以上の支援者のみの限定モデルだったのですが、全て売り切れたことで「高額なモデルが売れた」というニュースにもなりましたので大成功です。

クラウドファンディングでしか手に入らない、自分が好きなアーティストとのコラボ製品だとかなり興味をそそられそうですね…!

まとめ:クラウドファンディングを活用するべき4つの理由

1. 事前の期待を膨らませる=クラウドファンディング開始前から、情報を出し始める

2. 支援期間を適正に設定する=支援漏れと中だるみを防ぐ支援期間を設定する

3. オンラインで盛り上げる=プロジェクト期間は、オンラインで即レス体制を整える

4. オフラインでも盛り上げる= 支援候補者が集まる場に出向く。イベントを開催する

5. 中だるみ対策を考えておく=盛り上がりに欠ける時期に限定モデルなどの話題になるリターンを追加する

ちなみにここまで5つのコツを伺ってきましたが、何か他にコツなどあったりしますか?

そうですね。これは誰でも使えるわけではないのでお話していませんでしたが、ユカイ工学として狙っているのは「海外で話題になること」です。

クラウドファンディングが浸透し始めてきている今、ただのクラウドファンディングだと日本国内で話題になりにくくなってきています。一方で、海外で話題になると、「アメリカで話題!」という形で日本で話題になりやすいんです。特に海外メディアからの取材を受けると、日本国内で様々な大手メディアがそれを翻訳した記事を出してくれます。そのため、まずは狙ったメディアが拾ってくれやすそうな時間にプレスリリースをだしたり、CESやSXSWなどの大規模な展示会に出展したりしています。

ユカイ工学の場合は、すでに現地メディアや展示会とのつながりがあるので、だいぶ海外での話題作りが楽にできるようになってきました。このつながりは積極的に活用しています。

クラウドファンディングで失敗してしまう、2つのパターン

ここまで成功のコツについて伺ってきましたが、次は失敗パターンなどについて教えていただけますか?

特によくある失敗のパターンは大きく2つあると思っています。

それが

  • 「無謀な目標で、プロジェクト達成に失敗するパターン」
  • 「目標は達成したのに、その後に失敗するパターン」

です。

「無謀な目標」というのはどのようなものがありますか?

例えば、目標支援金額が高すぎて支援候補者が冷めてしまう場合や、金額を達成したとしても明らかに現代の技術では開発が不可能な技術を前提とした商品開発などですね。

目標支援金額が高すぎると「クラウドファンディングそのもので稼ごうとしてるのではないか?」という疑念や「どうせ達成は無理だろう」と冷めてしまうの、すごくわかります。しかし「目標は達成したのに、その後に失敗する」というパターンもあるんですね。

そうですね。例えば、プロジェクトマネジメントがうまくかずに開発そのものが失敗。クラウドファンディングをやったにも関わらず、想定以上にお金が必要になって資金繰りに窮して失敗。製造段階で中国の工場に頼んで品質管理や納期管理がうまくいかずに失敗。 こういった形でプロダクト作りに限らずですが、クラウドファンディング達成後に頓挫するパターンもあるんです。

こういったパターンは、経験が豊富であれば対策ができる部分ですよね。

そうですね。自社だけでなく、様々な企業の開発相談などにも乗ってきましたので、そういった知見は多いと自負しています。あとは熟練のプロジェクトマネージャーがいたり、初期の製造段階で柔軟に協力してくれる日本の工場などもあるので、弊社はクラウドファンディングの達成後に製造段階で失敗するようなことはほぼないと思います。

最後に、今後の予定について伺うことはできますか?

実は、Qooboの新作である「Petit Qoobo(プチ・クーボ)」のクラウドファンディングを3月27日(金)よりCAMPFIREにて開始しました。(2020年4月22日時点で1300%達成)

「Petit Qoobo」はQooboのひとまわり小さいサイズなのですが、Qooboを気に入ってくれたファンの「いつでも持ち歩けるようにしたい」という声から始まったプロジェクトです。そしてサイズ以外には「膝にペットが乗っているときに肌を通して感じる、なんとも言えない幸せ感」を感じられるような、「ペットのさりげない鼓動」「音や声にしっぽが反応する」など「Petit Qoobo」ならではの機能を開発しています。

クラウドファンディングの情報は以下のWebページにて公開していきますので、ぜひご覧ください。

▼CAMPFIREクラウドファンディングページ
https://camp-fire.jp/projects/view/228513
▼Qoobo公式ページ
https://qoobo.info/

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